2010-01-02

どうして、リアルエールを輸入したいと思ったの?どうして可能にになったの?前篇

さてみなさんこんにちは。

今回は、どうしてリアルエールを輸入したいと思ったのか、その辺を詳しく書いてみたいと思います。それには、私のキャリアパス(と言えるような大層なもんではないですが…)から書き始めますね。

私は以前、飲食関連書籍で有名な某出版社でフードライターをしていました。いろいろな業態の飲食店や、食材関連の企業、地野菜を作る近郊農家から国内のワイナリーまで、多岐にわたって取材・執筆をしました。そのライターの仕事の中で、特にワインについての興味(ソムリエのそれではなく、生産者としての)がいやがおうにも高まり、2006年にライターを辞め、シチリアにある超自然派ワイナリーで住み込みで仕事を始めました。そこはごく少人数の体制だったので、ブドウの栽培からワインの醸造まで、コアメンバーとして働く幸運に恵まれました。その頃、私の彼女(前のエントリで書いた、「家を出た嫁さん」とは彼女のことです…)は英国にいたので、彼女に会うためにボーンマスに行ったのが、リアルエールとの出会いでした。

「ああ、こんなに味わいの濃いビール(重いというわけではありませんよ)があるんだな」というのが第一印象でした。そして、五味を刺激する複雑な味わい、底味を支えるミネラル分に感動したものです。ああ、ワインと一緒だなと思いました。でも一点、ワインと違うのは、リアルエールはどんなにいい銘柄を飲んでも、陽性で、開放的で、いわば人と人をつなぐインターフェースのような、そんな感じがしました。私はもちろんワイン大好きですが、いいワインほど、グラスの中に集中してしまうので、あまり誰かとワイワイ飲むということはありません。

ビールの気安さに、嗜好品としてのエンターテインメント性を持たせたものが、リアルエールなんだと感じました。

シチリアでの仕事を終えて帰国し、さてどんな仕事をしようかと思ったとき、最初に思ったのはやはりワイン関係の仕事でした。ただソムリエに興味はなかったし、されど日本のワイン市場は世界でも有数の激戦区であり、小規模なインポーターが群雄割拠の状態でした。とりあえずは旧知の友人が経営する翻訳会社を手伝いながら、私は次のアクションプランを練っていたのです。
何か新しいことをしたい。そう思った時、思い出したのが英国で飲んだリアルエールでした。あの飲み物は、果たして日本に輸入されているのだろうか?そう思い立って調べてみました。すると、いまだ商業輸入はなされていないということが分かりました。いくつか障害があるのです。


  • カスク(樽)が重く、また容量が大きすぎる

  • 賞味期限が短い(開封前で2週間~1カ月)

  • カスクは通い樽なので、空になったら速やかにブルワリーに返却しなくてはならない

  • 出荷から提供時まで、徹底した温度管理(11~13℃)が必要



ちなみに、もっとも一般的なカスクのサイズは「ファーキン」と呼ばれるもので、9ガロン(約41ℓ)入ります。カスク自体と合わせた重量は約50kg!もあります。それだけの量を、1週間で売り切れるパブが、日本にあるかといえば、まあ、ないですよね…。だいたい、ファーキンを航空便で輸入したら、いったいいくらになるんだろう…。

Underground Cellar at Goat & Tricycle
ボーンマスの著名なパブ、「Goat & Tricycle」のセラーに眠るファーキンの山です

じゃあ、別に輸入しなくてもいいじゃん?そう思われる方も多いと思います。すでに米国産の「ケグ」リアルエールは輸入されていますし、国産のリアルエールも存在しています。そこまでこだわらなくてもいいんじゃないの?

ただ、これらのエールは、どうしてもホップが強すぎて、アルコールも高くて、モルトのシリアルフレーバーがきついもの(注:これをモルトの味わいと勘違いする人がいますが、本当のモルトの味は、そんな穀物風味ではありません)が多いのです。インパクトと飲みごたえがある、いいスタイルだとは思いますし、私もよく飲みますが、悪く言えば押しが強くて没個性と言えなくもない。まあ、ワインにおける旧世界と新世界の違いみたいなもんです。

だいたい、障害が大きいほど、何とかしてやろうと燃えるじゃないですか!

日本のエールパブで、米国のIPAを飲みながらも、それでも私は英国のおいしいカスクコンディションリアルエールが飲みたかった。あの複雑な味わいと精妙なバランス、味わいの強さではなく造りの集中力で飲ませる技術力の高さ、そういうエールをどうしても日本に紹介したい。
都内の某エールパブで働いていて、私が常連だったことから友人になった、ベテランバーテンダーさんが、「私たちがそのようなリアルエールを欲しがっても、インポーターが輸入してくれないんです。ここ10年、樽の輸入ビールの顔ぶれはほとんど変わってないんですよ」と言ってくれたことも、私の想いを後押ししてくれました。

そう思ったものの、日本にいては何の情報も手に入りません。思ったが吉日。私は英国に飛びました。早速現地の本屋で関連書籍を買ったそばから読破し、パブに行ってはセラーマン(リアルエールの品質管理者です)をつかまえて疑問をぶつけ、モルトファームやブルワリーを飛び込みで訪問し、電車とレンタカーと折りたたみ自転車を駆使して毎週末にどこかで開かれているフェスティバルにもできるだけ参加し、その上で毎日最低10種類のリアルエールをテイスティングするというノルマ(ウコン粉末を片手に…結構しんどいです)を課し、それを数カ月続けて見えてきたこと。

それは「リアルエールの輸入は、やりようによっては可能ではないか?」ということ。

文字ばっかのエントリなのに、長々と書いてしまいました…。
続きは次回の「後篇」で。

theme : Restaurant
genre : Gourmet

2010-01-02

英国のリアルエールってどんな飲み物?

みなさま、あけましておめでとうございます!!
本年がみなさんにとっていい年でありますように◎

もちろん、私にとっても最高の年にしていきますよっ!

Milk Street Brewery Beer!


さて、3回目の投稿でようやくという感もなきにしもあらずですが、ビール好きの間で、なんだか名前だけが独り歩きしているイメージのある「リアルエール」という言葉、これを今回はきちんと説明していきたいと思います。 

本ブログで言う、英国の「リアルエール」とは、伝統的な原料(モルト、ホップ、天然水、酵母)を用いて醸造され、二次発酵を樽(カスク)内で行った上面発酵ビールのことで、無ろ過、無清澄、無ガス添加のフレッシュな状態でそのまま樽より提供されるものを指しています。

このような特性から、英国のリアルエールはこれまで日本に商業輸入されたことがありません。


最後の「無ガス添加」というところが、米国の「リアルエール」と最も違うところです。米国では、ガスが添加されていますね。そのようなエールは、英国ではひとまとめにして「ケグエール」と呼ばれています。実は日本の地ビールメーカー各社が作っているのは、この「米国式リアルエール」である場合が多いです。

じゃあ、その他の特徴に行きますよ。


  • 原料は地元のもの、小規模生産のもの、高品質なものを原則に厳選されており(大手ビールメーカーの価格攻勢に対抗するには、地域性と品質が重要なため)、結果としてナチュラルで豊かな味わいを持つ。リアルエールは文字通り生きており、グラスに注がれる直前まで発酵し続けながら熟成していく飲み物である。

  • 現在、英国で稼働しているリアルエール醸造所は400~500ヶ所。銘柄数では5000ほどある。産業といえる規模で伝統的なリアルエールの文化が残っているのは英国だけ。

  • 上記のように非常に地域性と嗜好性が強い飲み物である一方、本質的にはビールであり、また味わいが非常に豊かであることから、TPOを選ばず楽しめる。アルコール飲料としての汎用性は非常に高い。


すでに美味しそうと思ったそこのアナタ。ではそんなリアルエールはどんな味がするのか、味わいの特徴を以下に列挙してみます。
Profile

olubayo

Author:olubayo
日本唯一の英国リアルエールエージェント兼セラーマン。大阪外国語大学卒業後、某大手新聞社を早期退職。翻訳をしながら某料理雑誌記者という二足のワラジ時代を経て、一念発起してシチリアの超自然派ワイナリーで修業。ワイナリー設立の資金集めのため、もう一つの偉大な醸造酒文化である英国の「カスクコンディションリアルエール」を日本に紹介する仕事に奮闘中~
お店でリアルエールを提供したい方、一度飲んでみたい方、業態開発をお考えの方、みなさん大歓迎です。どこへでも説明に伺いますよ!

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