2010-01-03

どうして、リアルエールを輸入したいと思ったの?どうして可能にになったの?後篇

みなさんこんにちは。さて、前回の続きです。

「やりようによってはリアルエールは日本に輸入可能じゃなかろうか」

そう思ったのは、リアルエールの消費者団体、CAMRAが出版している、「Cellarmanship」という本を読んでいた時です(この本、カスクコンディションエールの品質管理について書いてある本で、興味のある方には大変おススメです。必要なら、知りたい箇所を部分的に翻訳してさしあげますよ)。その中に、

「ポリピンと呼ばれる、段ボール箱に入ったやわらかいポリ製バッグがある。ワンウェイ容器で、容量は4.5ガロン(約20ℓ)が一般的。ただ、ヴェンティング(ガス抜き)ができないため、リアルエールには不向き。ただ、方法によってはヴェンティングできないこともない」と書いてあったのです。

早速現地調査を開始しました。しかし、探すとないもんです。八方探して、ようやくNorfolkのBranthill Farmの庭先で見つけたのがコレ。Norfolkの結構大きなローカルブランド、Woodforde'sのポリピンです。

Woodforde's polypin

これは行けそうだと、一目見てで思いました。だって、リアルエール輸入における障害のうちの3つ、つまり

  • カスクが異形で重い

  • 空のカスクは返送しなければならない

  • 容量が大きすぎる


が解消されるわけですから。

でも実際触ってみると、結構段ボールが薄いんですね。これは十分にスタッキングできるかな?とか、飛行機の貨物キャビン内の低い気圧に堪えられるかな?とか再び疑問がわいてきます。それに、ヴェンティングをどうするのかという問題も残っています。先のCellarmanshipには、「注ぎ口の反対側にピンホールを開けてヴェンティングし、その後ガムテープでふさぐ」などと書いてあるんですが、それでは漏れる危険性があって、安心してハンドポンプに繋げないじゃないですか…。

これらの問題点は、その後、現在の現地パートナーであるNigelという人物に会うことによって、解消されます。

彼を紹介してくれたのは、KentにあるWesterham Breweryのオーナー、Robert氏です。そして、Robertと私をつないでくれたのは、いつもお邪魔していた神楽坂のワインバー(現在移転休業中)のお客さんで、Robertと某外資系銀行で同僚だったTさんでした。そしてNigelは、私がどうしても連絡を取りたかった、英国のオンラインエールショップのオーナーだったのです…!!

なんかすごいですね、人の縁というものは…。

Nigelのショップを初めて訪問したのは、去年の9月です。そこでいきなり教えてくれたのが、ポリピンには2種類あるということ、一つは私が見たWoodforde'sのように、薄くて軽いもの。そしてもう一つがコレ。

Sturdier polypins

これ、見た目はあまり分からないんですが、段ボールが格段に厚いです。で、内部のポリ容器の素材も、厚みがあります。その他にも、タップの直径が、こちらの方が大きいです。

bigger tap

分かりにくいですが比較用に、こちらが通常サイズ↓

smaller tap

聞けば、5段くらい重ねても問題ないとのこと。またポリ部分の強度もこれなら安心できます。これでスタッキングと減圧貨物キャビンの問題はとりあえず解消しました。後はヴェンティングだけです。おそるおそるNigelに訊いてみます。

私  「Camraの本に、ポリピンはヴェンティングできないからエールに向かないって書いてあったけど」
Nigel 「ははっ!Camraの連中は原理主義者だからねぇ。カスク以外は認めたくないんだろう」

そう言って彼はやおらタップのネジを握り、ゆるめます…。

ブシュッ


Nigel 「これじゃダメかね?」
私   「…」(苦笑)

ヴェンティング、完了です◎(笑)
ガスの音とともに、私の疑問点はすべて雲散霧消したのでした。(注:実はヴェンティングをする際には、温度や大気圧などの様々な要件を考慮に入れなければならないので、難易度の高い作業です)

長年の疑問が氷解してほっと一息。彼の勧めるままに、店で売っているリアルエールをごちそうになります。まずはHarviestounのShiehalion(シェハリオンと読みます)などを…。

あ、カスクコンディションラガーだった…(大汗)
かく言う私も、たまにはエール以外も飲みたいのだ。
でもコレ、いわゆるラガーを想像して飲むと、裏切られます。旨いです。

Nigelと話しているうちに、彼が実はすごい人物であると分かってきます。彼は本業とは別に、英国全土のブルワリー
からカスクを取り寄せ、それを自分でポリピンに詰め直し、ブルワリーに返送するというプロジェクトを手掛けているのです。つまり、ポリピンによる遠距離輸送が可能かどうかを、ブルワリーの代わりに実地調査しているのです。

「一般的に、マイルドやビターは輸送に弱い、IPAなどのストロングエールは輸送に堪えると言われているよね。でもそれは現場の各論においては正しくない。各ブルワリーが用いる酵母の活性や、どの時点でカスクに詰めるかという醸造担当者のポリシーなどによって、エールの賞味期限と輸送可能性は大きく変わる。例えば○○のビターは、アルコール度は低いが輸送に堪える。一方、○○○のストロングエールは、酵母活性が高いから、輸送中のバーストが多いんだよ。だから、俺は自分で調査しているのさ。なあに、失敗したって大丈夫だよ。残ったカスクエールはお店で売ってしまえばいいんだから」

そう、彼の酒屋には、グラビティシステムでエールを提供するカウンターがあるのです!

Nigel's gravity system

Nigel's ale menu

すごいですよね。町の酒屋で、リアルエールを飲めたり、はたまたテイクアウト(!)することができたりするんです。
…理想です。日本でもやりたいです。15坪のパブで、しかもテイクアウト可能。仕事帰りにボトルに詰めてもらったブライトエールを手に帰宅とか。最高です◎(でも必ず、その日のうちに飲んでくださいね)

さらにNigelは続けます。「お前が輸入を希望するブルワリーがあれば言ってくれ。英国のブルワリーなら、ここまでの国内配送は問題ない。俺が輸出可能か、ファーキンを取り寄せてチェックしてあげるから。ファーキンしか売らないブルワリーのものでも、ここでポリピンに詰め替えることだってできるし」

…!!!???

いきなりすごい展開になってきました。それって、それって…??

「ああ、お前の仕事手伝ってやるよ!日本でリアルエールか。わくわくするな!!」

嬉しいです…。やっと現地の賛同者に出会うことができました。彼が協力してくれたら鬼に金棒です。
いや本当に嬉しかったんです。涙出そうなくらい。てか出ちゃったくらい。嬉しすぎて、着てきた一張羅のジャケット忘れて帰っちゃったくらい(後日、取りにいきました)。

すばらしい人々と知り合ったおかげで、容器の問題のみならず、銘柄選定の問題も解消したのでした。
これこそ、現地調査の醍醐味ですね◎

今回はここまで。次回はどうしましょう?ロジスティクスの策定にまつわるお話でもしますか…。

theme : Restaurant
genre : Gourmet

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olubayo

Author:olubayo
日本唯一の英国リアルエールエージェント兼セラーマン。大阪外国語大学卒業後、某大手新聞社を早期退職。翻訳をしながら某料理雑誌記者という二足のワラジ時代を経て、一念発起してシチリアの超自然派ワイナリーで修業。ワイナリー設立の資金集めのため、もう一つの偉大な醸造酒文化である英国の「カスクコンディションリアルエール」を日本に紹介する仕事に奮闘中~
お店でリアルエールを提供したい方、一度飲んでみたい方、業態開発をお考えの方、みなさん大歓迎です。どこへでも説明に伺いますよ!

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